皆さんこんにちは!ぽんたくです。
今回は2018年11月15日に講談社文庫より発売された、世にも奇妙な君物語(著作:朝井リョウ)について紹介していきます。
よろしくお願いいたします。
はじめに
本書を書店で見つけた際、偶にテレビで放送される「世にも奇妙な物語」に題名が似ているなと思い(誰もがそう思ったと思いますが)、この機会に手に取ってみました。
背表紙の紹介を読んでみた所、作者はやはり「世にも奇妙な物語」を意識して作っているみたいです。
表紙にはテーマパークでよく見かける、宙に浮いた円盤の周りに空中ブランコが沢山ついていて、それらが回っているアトラクションが描かれています。
しかし真ん中の方に一人の男性が落ちている事も確認できます。とても怖いですね。
この男性は何かに脱落した事を示しているのでしょうか?
果たして本文との関連があるのかが気になるポイントですね。
そして、帯にはどのような調査が行われたのかは分かりませんが「オチにやられる本第一位」との紹介がされております。
また、注意書きで小さく「※後ろから読むの禁止※」と書かれているのですが、こちらは守って読むことで正にオチに気持ちよくやられると思います。
実際私は、一番はじめから順番に読むことで最後の章は「こういうことか!」と少し驚くような展開がありました。
構成
本書は全314ページとなっており、
1話:シェアハウさない
2話:リア充裁判
3話:立て!金次郎
4話:13.5文字しか集中して読めな
5話:脇役バトルロワイアル
の全5編の構成となっております。
1編あたり50〜70ページ程で、どれも90分ほどで読むことが出来ます。
次のパートからは各物語のあらすじを紹介していきます。
シェアハウさない
主人公、田上浩子は20代後半のフリーライターです。
浩子は初めて自分の企画が通ったことで、喜びのあまり居酒屋で飲みすぎてしまいます。
電話越しの友人からも抑えるよう促されますが、浩子のペースは止まらず、酩酊状態となります。
一人で帰れなくなってしまうほどに浩子の意識が遠のいていく中、とある一人の女性に介抱され、共にタクシーに乗り込みます。
翌日、浩子は目が覚めると見知らぬ場所にいました。
そこには昨日居酒屋で助けてもらった40代ほどの女性がおり、朝ご飯もご馳走になることに。
さらに、家の住民はその女性(真須美)だけでなく、他に女性1人と男性2人、計4人で住んでいるシェアハウスだったのです。
浩子は過去に性被害を受けた経験があることから、それに関する本を執筆する中、並行してシェアハウスの実態についての記事を書こうと計画します。
こうして4人に近づこうと試みた浩子はシェアハウスに度々訪れるのですが、シェアハウスの不可解な点が幾つかあることに徐々に気づいていき、、、、
リア充裁判
20xx年4月、「コミュニケーション能力推進法」が施行された日本が舞台。
優秀な人材を確保し経済発展を目指すため、野外レジャー施設の拡大やSNS投稿の促進など、国を上げてコミュニケーション能力を重要視する動きになったのです。
この戦略には多額の費用がかけられているため、18歳以上が無作為に選出されて行われる「能力調査会」通称リア充裁判も同時に行われるようになりました。
このリア充裁判に合格すると、一定のコミュニケーションがあることが認められ、履歴書にも記載することが出来ます。しかし、不合格になるとコミュニケーション能力を高めるための課外活動が課せられることになります。
主人公の知子は、ある日突然このリア充裁判の参加票であるハガキを受け取ります。
しかし、真面目で弁護士になる目標を持った真っ直ぐな志を持った知子の姉は、過去にリア充裁判に参加し不合格となったことから、髪を栗色に染め、ハロウィンの日の渋谷でコスプレをしてお菓子を配ったり、サークルの先輩の家で鍋パーティーをする等といった課外活動を強いられることになってしまい、すっかりと変わり果ててしまいました。
そんな姉を目の当たりにした知子は、果たしてリア充裁判に対しどのように挑むのか?
立て!金次郎
主人公の金山孝次郎は20代後半の幼稚園教諭です。
孝次郎は園児の気持ちを第一に考えており、さらにその持ち前の大きな体格と明るい笑顔から、園児やその親御さんからも人気のある先生です。
しかし、孝次郎が勤務している幼稚園では、クレームを恐れ園児よりもその両親を第一に考えた運営方針のため、孝次郎との意向が会いません。
例えば、1年間で行われる各行事では園児たちの得意不得意に関わらず、平等に注目される役割与えようと機械的に計画を立てています。
次に開催される運動会では、運動よりも本を読むことが好きな学人くんが主役(応援団長)になっています。
孝次郎は何とか学人くんに合った役割を与えようと奮闘しますが、両親第一主義の学年主任である須永やモンスターペアレント達に苦戦します。
孝次郎は園児の適性を考え、無事に運動会を乗り切ることが出来るのか?
最後の最後まで注目です。
13.5文字しか集中して読めな
本田香織はニュースメディアを運営している会社でライターとして働いています。
タイトルと短い要約文でアクセス数を稼ぐため、誤解を招きかねないギリギリの表現を用いて記事を執筆しています。
また、注目を稼ぐため、芸能人やアスリートなどのプライベートに関する記事も書いています。
香織は夫と小学生の息子と3人で暮らしていて、息子はライターとして働いている母親に憧れを抱いています。よく真似事なんかもしていて、その尊敬度が伝わってきます。
また、夫は忙しい部署に配属されており、帰りが遅い日が多いです。
他にも夫に対して幾つか気がかりなことがあることから、香織は夫の浮気を疑います。
そんな中、所属する部署の室長からネット記事投稿の方針を変えることを告げられ、香織は納得のいかない状況に陥ります。
そして、香織は息子の授業参観に参加することになり、物語は思わぬ結末に向かって進んでいきます。
脇役バトルロワイアル
俳優の溝口淳平は、有名演出家の野田秀子が企画する舞台の主演オーディションに参加します。
見事オーディションの最終選考まで通過した淳平は最終選考の会場に入るが、そこにオーディション関係者はおらず、6人のオーディション参加メンバーしかいません。
しかも淳平を含め彼らは、今までに「脇役」と呼ばれるような役しか割り振られて来ておらず、経歴、性別、年齢などがバラバラなメンバーです。
どうしてこのようなメンバーが最終選考まで残ったのか、様々な推測が飛び交う中で脇役同士の共通の境遇もあることから、彼らは直ぐに打ち解け意気投合します。
そしてある時、1台のカメラが設置されているのを発見し、既にオーディションは始まっていることに彼らは気づきます。
審査基準は一体何なのか。淳平は念願の主役を掴み取ることが出来るのか。
ハラハラドキドキの展開に注目です。
読んでみた感想
本書は正に「世にも奇妙な物語」のような不思議で非現実的な舞台設定で、独自の世界観に連れていかれるような感覚になりました。
上記で書いた各物語のあらすじはあくまでストーリーの概要のみを書いたものですが、実際に読んでみると、現代社会が直面している問題などが浮かび上がってくる、朝井リョウ特有の考えさせられる内容であることが分かると思います。
例えば、3話の「13.5文字しか集中して読めな」では、現代のメディアの現状に関して問題提起を起こしているような、そんなメッセージを感じました。
朝井リョウ作品のファンだけではなく、オリジナルの「世にも奇妙な物語」が好きな人たちにもおすすめできる1冊であると思います。
最後までお読みいただきありがとうございました!
また次の記事も読んでいただけたら幸いです。
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