皆さんこんにちは!ぽんたくです。
今回は2024年6月3日に株式会社日経BPより発売された「生成AI真の勝者」(著者:島津翔さん)について、印象的だった「AIゴールドラッシュ」「GPUとGPU3つの死角」について紹介していきたいと思います。
よろしくお願いします。
AIゴールドラッシュ
1948年、アメリカにあるサクラメントのシエラネバダ山脈で金塊が見つかるや否や、その噂は瞬く間に広がりました。
様々な企業や人々は、一攫千金のアメリカンドリームを掴むために鉱山へと駆り立てました。
いわゆるゴールドラッシュです。
とある採掘者の男性も金を採掘するためにサクラメントに向かいました。
しかし、そこは既に採掘者で溢れていました。
そこで彼は、帆船などで使われている頑丈な生地で「デニム」を発明し、採掘者の作業着として大きな売上を上げ、億万長者になりました。
そんな彼の名前は「リーバイ・ストラウス」で現在でも有名なデニムメーカーです。
ゴールドラッシュ時は実際に金を採掘して一攫千金を達成した人はほんの一握りなのですが、リーバイスの様な金採掘の周辺に商機に目を付けて成功する企業も存在したのです。
この様な企業は「ピック&ショベル企業」と呼ばれています。
現在はそのゴールドラッシュに似たような状況がAIで起こっていると言われています。
2023年にアメリカのopenAIが開発したchatGPTの空前の大ブームにより、生成AIに爆発的なブームが到来しました。
米マイクロソフトやグーグルといった超巨大企業が参戦する競争になっています。
そんなAIの時代でも半導体や半導体の素材、サーバといったAIのサービスを作成するのに必要な「ピック&ショベル企業」が伸びています。
次の章ではそんなピック&ショベルの1つであるGPUについて紹介していきたいと思います。
GPU 覇権握るNVDIA
AIモデルが計算処理を行うためには「AI半導体」というものが欠かせません。
そのAI半導体の1つに「GPU」というものがあります。
GPUというのは3次元の画像などを描画するのに必要な計算処理を行うために使われる半導体です。
GPUは大量のデータを同時に処理することができる「並列処理能力」に優れており、AIの学習と推論においてはCPUを凌駕します。
2012年、グーグルは「猫を認識するAI」を開発したことを発表しました。
1000万枚もの猫の画像を学習することで猫という概念を獲得しました。
しかし2013年6月、スタンフォード大学がエヌビディアと共同で行われた研究で、GPUたった3台でグーグルの6.5倍の規模のAIサーバの環境を構築しました。
このプロジェクトが注目を浴び、GPUの需要が一気に加速します。
そしてGPUのシェアの8割はなんとエヌビディアが占めているのです。
昨今のGPUの大きな需要もあり、エヌビディアの株式はここ数年で右肩上がりで、しかもなんと時価総額第一位の企業になっています。(2024/06/19現在)
現在多くの企業がAIシステムを構築するためにエヌビディアのGPUを欲しがっていますが、そんなGPUブームはいつまでも続かないとされています。
以下がGPUの3つの死角です。
死角1. AI向けの計算需要はいつまで続くのか
AIモデルのトレンドは既に変化しつつあります。
openAIやグーグルといった巨大テック企業がパラメータ数やデータ量で競う「規模の競争」が繰り広げられている一方で、AIを利用するユーザ企業は比較的小さな規模のAIを適材適所で検討するようになりました。
大きなモデルというのは汎用性が高くて優秀ですが、その代わり計算に必要なリソースが大きくなりコストがかさむからです。
最近は大規模言語モデルだけではなく、小規模言語モデルというモデルの開発が進んでおり、AIのユーザ企業はGPUサーバの最適化を始めています。
米国のとあるエンジニアは、「サーバーGPUを無理やり買い集める時代は脱しつつある」と話しています。
死角2. GPUのコモディティ化
2つ目の死角はGPUの低価格化(コモディティ化)です。
市場の活性化や競合製品の登場により、いずれは価格競争を余儀なくされる状況がやってきます。
例えば2009年には当時売れ筋だった日本企業の薄型テレビの価格は14万円ほどでしたが、
3年後の2012年には6万円以下と半額以下になりました。
その「3年で半額」という法則は、他にもDVDやブルーレイディスクのレコーダーにも当てはまっています。
米データブリックスのゴディシCEOはそのことをルーターに例えています。
インターネットの登場当時、人々の熱狂はまずルーターなどのネットワーク機器に向かわれました。
しかし、本当の価値はインターネット上のコンテンツやアプリケーションにこそあり、ルーターはコモディティ化した。と分析しています。
当時、米シスコシステムズがルーターのなんと85%を占めており、ハードウェアの高いシェアという観点でGPUのエヌビディアと重なります。
しかし、2001年にインターネットバブルは弾け、シスコの株価は3分の1まで下落してしまいます。
マクロ経済の影響が大きかったものの、2000年時点で既にルーターなどのネットワーク機器がコモディティ化していたという指摘があります。
果たしてGPUもコモディティ化してしまうのか?
今後も注意して市場をチェックしていきたいところですね。
死角3. ポストGPUの登場
最後の3つ目の死角は「ポストGPU」と呼ばれる新型のAI向け半導体の登場です。
その新型AI半導体の特徴は、今後のニーズを見据えてAIの学習ではなく推論を専用とするチップであり、スタートアップ企業が中心に様々な技術が登場しています。
例えば、アメリカのdマトリックスという企業は異なるチップを組み合わせる「チップレット」技術を採用し、最先端GPUの40倍のメモリー帯域幅を実現しました。
また、
・ハーバード大学を中退した21歳のコンビが起業したエッジドAI
・グーグルで機械学習向けのチップ「TPU」を担当していたエンジニアが創業したグロック
・人間の脳の特徴を再現するチップ開発を目指し、サム・アルトマン氏(openAI創業者)が投資したことで知られるレインAI
・ドローンやロボット、自動運転向けのチップを開発するシマAI
などの企業が次々と投資を集めています。
今後この様な企業がGPUを脅かす存在となるのか大注目ですね。
感想 チャットGPT、エヌビディアだけじゃない!AIの可能性が広がっていることが分かる1冊!
今回紹介した内容以外にも、本書はチャットGPTといったAIモデルや、AWSやアジュールといったプラットフォーム、地政学的観点でのAI、そして人類に勝利したチェスのAIやAI失業、AI兵器などを題材にした人類とAIに関する内容も書かれていました。
難しい言葉も沢山ありましたが、生成AIの現状に関して幅広く学ぶことが出来ました。
特に、私はGPUメーカーであるエヌビディアに投資をしているので、GPUの死角に関する内容はとても興味深かったです。
あまりエヌビディアに対し盲信しすぎない様に気を付けようと思います。
最後までお読みいただきありがとうございました!
また次の記事も読んでいただければ幸いです。
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